ADHD(注意欠陥多動性障害/注意欠如多動症)と診断されて2年が経った池田ラスカル(@rasukarurun)です。
私は、大人になってからADHDを診断され、精神障害者保健福祉手帳(※以下、障害者手帳)を申請しました。ADHDは生まれつきの脳機能障害ですが、私が診断されたのは社会人になってから。
それまで“健常者”として生きてきた私。なぜ障害者手帳を取得しようと思ったか、手帳を取得して2年間で得られた“金銭的メリット”と“精神的メリット”について書いていきます。
- ADHDの診断を受けたけど、障害者手帳を申請するか悩んでいる
- 障害者手帳を取得したら、就職に支障が出ないか心配
- 障害者手帳のメリットが分からない
こんな悩みがある人は、ぜひ記事をご覧ください。
※申請には精神障害にかかる初診日から 6か月 を経過している必要があります。私は、ADHD診断前からうつ病や社会不安障害で通院をしていたので、すぐに申請できました。
目次
大人になってから、精神障害者保健福祉を申請しようと思った理由
私は24歳で看護師として就職したもの、業務について行けず、3か月で休職。元の職場に戻る勇気もない、一人暮らしで生活していくお金もない。『この先、どうやって生きていけば良いのだろう』と、先が真っ暗の状態でした。
『自分がこの社会で生きていくには、福祉の力を借りるしかない。』
そんな気持ちで、休職中に障害者保健福祉手帳を申請。
障害者手帳を取得することで、障害者雇用の選択肢も広がることを期待しました。結局、一般就労のアルバイトに就き、障害者であることは会社に隠して生活しています。それでも障害者手帳を取得したことで、金銭的・精神的メリットが得られました。
障害者手帳の金銭的メリット
住民税(県市民税)が非課税になった。
障害者手帳を取得すると、障害者控除を受けることができ、住民税が安くなります。
地方税法では下記のように定められています。
障害者、未成年者、寡婦又は寡夫であって前年中の合計所得金額が125万円以下の者については、住民税を課さない。
合計所得金額は、社会保険料等を差し引いた額。年収に換算すると200万程度で、住民税が非課税(免除)になります。
池田ラスカル
また、確定申告で障害者控除を受けることで、所得税も安くなります。
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【2018】自分で確定申告をして障害者控除を受ける方法【還付申告】
NHK受信料が全額免除
放送視聴可能なテレビやワンセグを所有していれば、NHKの受信料を支払わなければなりません。しかし、下記の条件に当てはまれば、NHK放送受信料の全額免除が出来ます。
・精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方がいる世帯
・世帯構成員全員が市町村民税(特別区民税含む)非課税の場合
私は市町村民税(住民税)が非課税なので、手帳が交付されてすぐにNHK受信料の免除申請。それまでは衛星契約+地上契約で6か月ごとに12,730円支払っていたのですが、全額免除になりました。
前払いで支払いをしていた分は、払い戻しがされました。
「テレビを持っていないので契約していない」「インターネットしかしない」という人も多い時代。しかし、今後はスマートフォンやパソコンでインターネットに接続しているだけで、受信料の対象となる可能性があります。[1]NHKがネット受信料検討 答申案、TVなし世帯も対象 :日本経済新聞
取り立ても厳しくなっているので、きちんと契約して免除の手続をしましょう。
参照リンク放送受信料の免除について |NHK
公共施設や運賃の割引
精神障害者保健福祉手帳があれば、公共施設や交通機関の料金が無料・割引になります。
美術館・博物館などの公共施設入場料、娯楽施設の利用料、神社仏閣の参拝料・バスの運賃など。特に美術館・博物館・神社仏閣は、ほとんどが無料。当事者だけでなく、付添人1人まで割引が受けられるところが多いです。
障害者手帳の利用は『障害者手帳で行こう!~全国版~』を活用しよう
サイト「障害者手帳で行こう!~全国版~」には、全国の障害者手帳が使える施設・割引情報が分かりやすくまとめられています。自分の住んでいる県のページを見て「身近にこんなに使えるところがあったんだ!」とびっくりしました。
池田ラスカル
障害者手帳を持つことで外に出る機会が増え、社会や人と関わるきっかけにもなり、人生を前向きに生きることにも繋がりました。
障害者手帳の精神的メリット
私は、減税や障害者雇用のために障害者手帳を申請しました。しかし、実際に手にしてみて得た一番大きいメリットは、精神的なものです。
ADHDで“できない”自分を許せるようになった
“障害者”という枠の中に自分を置くことで、自分を周りの人を比べることも少なくなりました。
私は大人になるまでADHDという発達障害があると気付かず、不安障害を抱えながら、健常者として生きてきました。子供の頃から不器用で“周りと同じように出来ない”という劣等感を感じてきました。
学校にも社会にうまく馴染めず、留年・休学・休職を経験。そのたびに「何で自分はできないんだろう」「自分の努力が足りないからだ、甘えてるからだ」と思っていました。社会生活に苦しんで、さらに自分を責めて苦しんでいました。
障害者手帳を手にしてからは「自分は障害者なんだ」と思えるようになりました。“できないこと”も“障害”として受け止め、自分を責めることから解放されました。
わたしが障害者手帳を申請して感じてる一番のメリットは「自分を障害者だと言える」という精神的メリット。
— 池田ラスカル❄️ADHDブロガー (@rasukarurun) May 27, 2016
仕事の選択肢が増えるメリット
障害者手帳を取得したら、ハローワークで障害者枠の就労相談や求人登録が可能。障害者雇用求人・一般雇用求人の両方に応募ができました。
障害者手帳を取得したことで、仕事の選択肢が増えました。
就職するための就労支援サービスが受けられる
最近では、障害者に対する公的な就労サポートだけでなく、民間でも就労移行支援事業所[2]一般就労等を希望する障害者に対して、知識・能力の向上・実習・職場探し等をサポートする事業所が増えています。
発達障害者が利用できる就労移行支援サービス
- 仕事復帰を全力サポート | 就労移行支援のMelk (東京・首都圏)
- LITALICOワークス(就労支援サービス) (全国展開)
- 発達障害専門の就労移行支援【リンクビー】(関東・関西・中部地方)
- 障害者の就職・転職なら【dodaチャレンジ】(東京・大阪で就職実績No.1)
しかし、手帳を所有することで、障害者雇用において有利になります。

私も、LITALICOワークスの説明会に2回出席しました。説明会や面談・見学のみなら無料の事業所が多いので、興味のある方は参加してみてはいかがでしょうか。
障害者手帳のデメリットは全くなかった
障害者手帳を取得することで、社会で生きづらくなったらどうしようかと不安でした。しかし、実際はデメリットはほとんど感じていません。
障害者手帳とADHDが、会社にバレることは無かった。
障害者手帳を所有していることは申告しなくても良いし、不要だと感じればいつでも返還ができます。
障害をクローズにして一般雇用で働いていますが、障害者手帳を所持したことで、勤務先の会社にバレることはありませんでした。仮にバレてしまっても、障害者雇用促進等法[3]障害者の雇用の促進等に関する法律。参照:障害者差別禁止指針(PFD)により、障害を理由にした解雇は禁止されています。
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まとめ―障害者として生きていける安心感が、手帳を取得した一番のメリット
障害者手帳を取得することは、逃げではありません。みんな生きづらさを抱えています。だからこそ、全てを“できない”と切り捨てる訳じゃなくて、“今までの自分よりも、うまく出来るように頑張ろう”と思うようにしています。
障害者手帳を手にしてからも、悩むことはあります。仕事では無理をし過ぎてキャパオーバーになったり、やってみてダメで心に傷がついたり、奮起してもすぐに心が折れたり。どこまで頑張ればいいのか、社会とどう向き合えばいいのか… この先もずっと考え続けると思います。
今の私は“障害者”というラベルにアイデンティティを感じています。障害者手帳を持つことで安心感を得られました。
池田ラスカル
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References
↑1 | NHKがネット受信料検討 答申案、TVなし世帯も対象 :日本経済新聞 |
---|---|
↑2 | 一般就労等を希望する障害者に対して、知識・能力の向上・実習・職場探し等をサポートする事業所 |
↑3 | 障害者の雇用の促進等に関する法律。参照:障害者差別禁止指針(PFD) |