ADHD(注意欠陥多動性障害/注意欠陥多動症)の池田ラスカル(@rasukarurun)です。この間、知人から成人ADHDの治験を紹介していただきました。知人の主治医が、製薬会社と協力して患者に治験を行っているそうです。
知人のかかりつけ病院の精神科で配布されていた、成人ADHD治験のパンフレットを受け取りました。
私は、複数の治験サイトに登録しています。JCVN治験ボランティア 、ニューイング 、
新薬ネット などです。今までは治験情報サイトでしか見たことがなかった成人ADHDの治験募集…本当にあるんだなぁ…とびっくりしました。
新薬が試せるかも?と期待を持った私。治験について詳しく知りたいと思い、パンフレットに書かれてあった病院に問い合わせをしました。色々詳しいお話を聞くことができたので、今回の記事では、成人ADHDの新薬治験の内容についてまとめました。
<目次>
“治験”とは?臨床治験とは違う?
治験とは発売前の薬の安全性と有効性、副作用を検証するための臨床試験のことです。
製薬メーカーが薬を販売するには厚生労働省の承認・認可が必要で、治験はこの申請で必ず必要な過程となっています。臨床試験は、人に対して行う試験の全般を意味し、治験は発売前の医薬品試験を指します
引用:健常成人の治験
発売前(厚生労働省の認可を受ける前)の医薬品試験のことを“治験”とよびます。“治験“は高額な協力費をもらえる案件もあり、“危険な人体実験アルバイト”という誤ったイメージがあります。
しかし、ADHDの治験で使用される新薬は既に海外では承認されている薬が多く、基礎試験をパスした後に行っています。安全性は高いと思います。
成人のADHD治験の参加条件-パンフレットの内容
今回、知人から紹介していただいた病院の成人治験募集パンフレットでは、参加に以下のような条件がありました。
- 18歳以上の成人
- ADHD(注意欠陥多動症)と診断をされている
- 心臓、腎臓、脳、血液などの疾患がない
- 精神疾患がない(ADHDを除く)
※その他、詳しい条件や疑問点はお問合せください。
(18歳以上だし、診断されてるし、もしかしたら参加できるかも…?)と思い、パンフレットの連絡先に連絡をしました。
成人ADHDの治験について病院に連絡したところ、治験コーディネーターの方が問い合わせに答えてくださいました。医師から詳しい話を聞くためには、担当医の診察予約が必要なのですが、初診予約が2か月先とのことで諦めました。
参加資格は?ADHD以外の薬を飲んでいたら受けられないの?
治験の実地前には検診を受けます。既往歴や現在治療内容をチェックし、「治験を安全に、正確に行えるか?」を確認します。喫煙歴、飲酒歴、BMI(身長体重)、国籍なども問診されます。私は現在、SSRI抗うつ剤と抗不安薬を少量内服しているため、治験が受けれない可能性が高いとのこと。
あとでパンフレットを読み返すと、参加条件には「精神疾患がない(ADHDを除く)」と書かれてありました。“ADHD以外の精神疾患”とは、うつ病・双極性障害・不安障害などです。
「飲むの辞めたら受けられるの?」「過去に骨折や網膜剥離で手術したけどダメなの?」と色々疑問が湧いてきました。しかし、詳しいことは主治医の診察、検査を受けなければ判断できないとのこと。
うーん…
治験を受けるほど悩んでるんだから、二次障害で鬱にもなるだろ!
と思わず心で叫びました。
新薬を試したいほど悩んでいる成人ADHDは、何らかの鬱や不安障害に陥ってるのではないでしょうか。鬱なら治験受けれないってなんか理不尽…。しかし、正確な治験データーを取るためには仕方がないですね。 あと「妊婦はNG」だそうです。(当たり前ですが)
治験はどうやって行うの?期間は?
成人ADHDの新薬治験の内容について、コーディネーターから大体の説明をいただけました。
※あくまで自分が紹介していただいた病院のもので、すべての治験に当てはまる内容ではありません。
治験の流れ
- 病院で担当医からインフォームドコンセント(説明)を受ける。参加意思の確認。
- 検査の実施。検査内容は問診、身長・体重、心電図、血液検査、血圧測定、尿検査。必要に応じて眼底検査や胸部レントゲン、心理検査など。
※医師が治験可能か判断するまで2週間前後 - 再び医師より説明を受け、同意を得て治験がスタート(いつでも途中で辞めることは可能)
- 定期的に通院し、診察を受け、毎日薬を内服してもらう。定期的に血液検査を行い、副作用が出ていないかチェックする
- 数か月間の治験終了後は、希望者のみ1年間の長期投与試験を受ける(※これは発売後の試験であり、市販してから行うため治験ではない)
治験はどうやって効果を確かめる?
治験には、いくつかの段階があります。今回の募集はフェーズ3(第三段階)とよばれる治験です。発売前の新薬の有効性をチェックするために、新薬とプラセボ(有効成分を含まない偽の薬)を比較するそうです。すでに少数の患者での試験が行われており、今回の治験は大多数の患者に行うとのこと。
対象患者を有効成分の含む新薬を内服する患者と、プラセボ(偽薬)を内服する患者に分けて、効果に差が出るか比較をします。
なぜプラセボ(有効成分のない偽の薬)を飲むの?
有効成分を含まない薬を飲んでも、「薬を飲んでいる」という意識だけで心理的作用が働き、効果をあらわすことがあります。これがプラセボ効果です。
新薬を飲んだ患者が良い反応を示したとしても「本当に有効成分が効いているのか、心理的効果なのか」判断ができません。
「本当に新薬の有効成分が効くのか」確認するためには、まったく有効成分の含まない偽薬(プラセボ)を飲んだ患者と比較する必要があります。
もちろん患者本人には、飲まされている薬が新薬か、プラセボか教えてもらえません有効成分を含まない薬を飲まされる可能性もあるんですね!治験にはいくつかの段階があり、プラセボを使用しない治験もあります。
治験で使われる新薬は何?
薬については医師や薬剤師とアポイントを取らないといけないため、詳細は教えていただけませんでした。現在国内で認可され、処方されている薬は2種類(コンサータ錠、ストラテラカプセル)だけです。
しかし、いくつかの未認可ADHD新薬の発売前試験が行われているため、その中のどれか?の治験だと思います。
現在、日本国内で発売前の治験段階(フェーズ3)のADHD治療薬を調べてみました。
ダソトラリン
dasotraline
ダソトラリンは、大日本住友製薬が開発中のADHD治療薬です。
2016年現在、最終的な治験が行われており、2018年の発売を目指しています。
大日本住友、発達障害の治療薬開発へ 17年度にも米で販売申請
本剤は、サノビオン社の自社開発品であり、ドーパミンおよびノルエピネフリンの再取り込みを阻害する新規の DNRI (dopamine-norepinephrine reuptake inhibitor)です。
1 日 1 回投与の長時間作用型の製剤であり、安定した血中濃度が一日中持続するため、高い有効性を長時間維持することが期待されています。
引用:注意欠如・多動症(ADHD)治療剤として開発中の dasotralineに関する第Ⅱ相臨床試験データの発表について
インチュニブ(グアンファシン)
Intuniv
グアンファシン塩酸塩徐放性製剤(米国での商品名はインチュニブ)は、塩野義製薬株式会社がアイルランドの製薬会社と共同申請している薬です。
2016年1月に、日本国内での製造販売承認申請が行われました。しかし、この申請は小児のADHDに限ったものです。成人のADHDへの効果は、現在治験段階です。
追記:2017年5月よりインチュニブが認可され、発売が決定しました
塩野義製薬とシャイアー・ジャパンは、注意欠陥・多動症(ADHD)治療薬として初めての作用機序である選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬「インチュニブ錠1mg・同3mg」(一般名:グアンファシン塩酸塩)を新発売した。 同剤は、1日1回投与の非中枢刺激薬で、ADHDに対する作用機序はまだ明確ではないが、後シナプスのα2Aアドレナリン受容体を選択的に刺激することで、シグナル伝達を増強させることが非臨床研究から示唆されている。
【新製品】ADHD治療薬「インチュニブ錠」を発売 塩野義製薬、シャイアー・ジャパン : 薬事日報ウェブサイト
ビバンセ(リスデキサンフェタミンメシル酸塩)
Vyvanse
ビバンセ(リスデキサンフェタミンメシル酸塩)は、米国で販売され、広く使用されているADHD治療薬です。日本では未認可です。インチュニブ同様に、塩野義製薬が2011年から治験を進めています。
コンサータと同じような、中枢性交換神経刺激薬です。
日本から個人輸入で買う人もいる薬ですが、個人輸入は高額ですし、健康問題も心配なので、お勧めしません。
治験にかかるお金は?協力費は貰える?
今回紹介していただいた治験の案件では、治験薬の薬代・検査費用は製薬会社が負担していただけるとのことです。
また、病院からは交通費の補助などの負担軽減費出るとのこと。
「法律上はボランティア」という扱いなので、金銭を対価として募集することはできないらしく、問い合わせ段階では詳しく教えてもらえませんでした。
参加協力した人が貰える金額を公表して広く募集したりすることは禁じられているそうですね。確かに、病院のHPや製薬会社のHPには記載がありません。
治験サイトに登録していますが、無料会員登録をすると治験協力費が分かることが多いです。
しかし、事前説明会や検診に行かないと協力費の額を教えてもらえない案件もあります。
無料でADHD治療を受けられるのは大きなメリット
現在日本で認可されているADHD治療薬は高額で、そのために治療をやめる人もいるくらいの負担です。
治療費軽減の自立支援医療制度もありますが、それでも毎月5000円以上支払ってる人がほとんどです。私は低所得なので月2500円ですが…。
※自立支援医療制度についてはADHD薬物治療に必須!精神科自立支援医療制度の話 を参照にしてください。
無料で新薬の治療が受けられるのは、すごくメリットがありますね。
また、治験サイトに登録すると「事前検診」として無料で健康診断が受けられます。そのために登録する人もいるのかな?
普通に病院でレントゲンや血液検査を受けたり、健康診断を受けるにはお金がかかりますから…。
私が治験を断念した理由
私が治験を断念した理由は、以下の3つです。
- 治験を受けるには、今飲んでいるコンサータ錠とストラテラを断薬しないといけない(一時的でも離脱症状が出れば、バイトに行けなくなる。生活の不安)
- おそらく抗うつ剤を飲んでいるので、治験前検査に引っかかりそう
- 病院が遠い(交通費は出してくれるけど寝坊でドタキャンしそう)
ということで、今回の治験募集は、担当医の予約を取りませんでした。
あー、早く承認してくれないかな…新薬…。
治験を受けるにはどうしたら良い?
これからADHDの診断を受けようとしている人や、診断を受けたばかりの人、診断済みで薬を検討している人
そして、過去にコンサータかストラテラを飲んでいて辞めた人などが、治験に向いていると思います。
今回私が紹介していただいた病院のADHD治験募集は、通院型の治験です。その病院や提携クリニックの通院患者を対象としているもので、遠方から広く募集はしてないとのこと。
そのため、具体的な病院名などは記載できません(病院のサイトにも載っていませんでした)
治験募集の情報を得るには、2つの方法があります。
通院している病院の主治医や、近隣の医療機関に直接問い合わせる
近隣の医療機関を探す方法は→【大人のADHD】検査と診断を受けれる病院・クリニック検索ツール。転院先探しにも便利! の記事を参考にしてください
治験情報サイトに登録して案件を探す
おすすめの治験サイト
私は、複数の治験サイトに登録して、案件をチェックしています。いくつか紹介します。
日本最大級の新薬モニター情報サイト新薬ネット 
新薬ネット は会員数6万人を超える会員サイトです。無料登録をすることで、新薬治験の情報だけでなく、体験談なども読むことができます。
全国各地の治験の情報が豊富にあるため、自分の条件に合う案件も見つけやすいです。
ニューイング 
ニューイング は、健康成人の治験から、疾患を持った方の治験まで幅広いです。特に、男性の入院型治験が多いです。
無料登録に年齢制限があるサイトもあるのですが、こちらは18歳~80歳で年齢制限が広く、既往歴があっても登録できます。
治験最新情報サイト「JCVN」 
治験最新情報サイト「JCVN」 は案件数が多くて幅広いです。疾患の方を対象にした治験から、健康成人の治験まで幅広いので、よくチェックしてます。
こちらに無料会員登録すると、事前検診(レントゲンや心電図など)が無料で受けられます。治験を受ける・受けないは別として「無料で健康診断を受けられる」のは得ですね。
心電図とか、普通にやると検査代が結構高いので…。
疾患を対象とした治験は、ニキビやアトピー、喘息などの治験が多いです。特に、関東・関西・福岡の治験情報がたくさんあります。
すべて登録も検診も無料なので、興味のある方はチェックしてみてはどうでしょう。
そして良いADHD治験情報があったら教えてください(切実)