ADHDのラスカルの手帳

四国在/20代でADHD(注意欠如多動症/注意欠陥多動性障害)と診断/コンサータ・ストラテラ/うつ/社会不安/アルバイター/ クラウドワーカー/生きるための記録/

NHKが伝えてくれた“発達障害者”が生きる世界

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 ADHD(注意欠如多動症/注意欠陥多動性障害)の池田ラスカルです。NHKが2017年5月より始動させている「発達障害プロジェクト」をご存知でしょうか。

 その第一弾として5/21(日)夜9時のNHKスペシャルで「NHKスペシャル | 発達障害~解明される未知の世界~」が放送されました。

 日本の社会では、あまり認知されていないのが発達障害。メディアの影響力は良くも悪くも大きいため、期待半分・不安半分の心境で生放送を見守りました。今回の放送では“感覚過敏”という症状にスポットライトがあてられました。

 

 

1年がかりのプロジェクトとNHKの本気

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 そもそもNHKの「発達障害プロジェクト」って何をするの?ということですが、NHKの様々な番組で発達障害を取り上げていくようです。

 公式サイト発達障害プロジェクトの公式サイトでは、番組で取り上げて欲しいテーマ・意見を募集したり、放送予定が掲載されています。

 これまで、各種メディアで「発達障害」が取り上げられることはありました。しかし「定型発達者(健常者)から見た発達障害のイメージ」だけが切り取られたり、偏った内容の特集が多くありました。

 (本当はそうじゃないのになぁ)(こういう部分も知って欲しい…)と、いつもモヤモヤした気持ちで発達障害特集を観ていました。社会の中でうまく生きられない、声も出せない発達障害者の心の声や叫びを知って欲しい!そんな風に思っていた私。

 今回の発達障害プロジェクトでは、当事者や家族の声を取り上げ、誤解されやすい発達障害のリアルを伝えていく趣旨の取り組みです。

 

伝えてくれた「見えにくい障害」の苦しさ―「感覚過敏」の症状を映像化

 5/21(日)のNHKスペシャル「NHKスペシャル | 発達障害~解明される未知の世界~」は、これまでにはない番組内容でした。

 生放送のスタジオ。MCはあさイチと同じ有働アナウンサーと井ノ原さん。スタジオの背景には、NHKに送られたFAXやメールがぎっしり貼られてあります。

有働アナ「(生放送の理由について)当事者の皆さんの話しをとにかく沢山聞きたい、生の声を」

井ノ原さん「皆見て欲しい。ぜひ観てくださいとか、軽いノリじゃなくて、観た方が良いと思います!」

  発達障害をテーマとした1時間の生放送。気合が入ってるな~という印象です。15人に1人が発達障害というデーター、予約が殺到する都内の発達障害専門外来の様子などが伝えられ、日本を取り巻く発達障害の状況が伝えられます。

 まずは、発達障害にはひとつであるASD(自閉スペクトラム症)の約半数にあるとされる「感覚過敏」が取り上げられます。大阪大学の研究グループが当事者に聞き取りをし、“感覚過敏”によって「世界がどう見えているのか」を映像化する取り組みが伝えられます。

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「明るいところでは世界が眩しく感じられ、光が目に刺さるようだ」

「動くものを見ると、色が失われたように感じる」

「光の粒が見えたように感じる」

「外全体が白っぽく見えて、目が痛い」

「夜は、車のヘッドライトや自転車のライトが痛い」

 実際にどういう風に世界が見えているのか、コントラストや明るさを再現して、イメージ映像が作られました。私はADHDですが、こういった感覚過敏の症状はほとんどありません。「感覚過敏」はぼんやりとしたイメージしかありませんでした。しかし、映像で可視化することで、感覚過敏の特異な世界がリアルに伝わってきます。

 

コミュニケーション障害の裏にある“感覚過敏”

 VTRでは、ASD(自閉スペクトラム症)の高校生、河髙さんが紹介されます。河髙さんは感覚過敏の中でも、音を敏感に感じ取る“聴覚過敏”の症状が強いようです。

 スーパーマーケットの食料品売り場では、蛍光灯やバックヤードの冷蔵庫の音などが大きく聞こえ、店内にいるのは15分が限界。

「色んな音が一気に入ってくる。疲れる。」

 騒音を消すためのイヤホンが無ければ外を歩けない、いくら工夫しても、完全に音を避けることはできず、少しの外出で心身ともに疲れ果ててしまうようです。

  私の知人で聴覚過敏に悩んでいる人は、このような音をシャットダウンするデジタル耳栓を使っています。聴覚過敏のある人は、普通の人よりも音を敏感に感じ取ってしまい、大きく聞こえるそうです。それが、人とのコミュニケーションに大きな影響を与えていました。

音が聞き分けられない苦しみ

「様々な音が混ざり合って聞える。声を聞き取ることがつらい。」  

 騒がしい喫茶店での様子を、河髙さんはこのように語っていました。周りのお客さんの話声、店員さんの声、食器の音、キッチンから聞こえる音…色々な音が全て頭に入ってくるようです。そのため、対面した相手の声が聞き取れず、会話がうまく出来ません。健常者の脳は、脳の司令塔の働きによって、不要な音のレベルを下げることができます。そのため、聞きたい音だけを聞き取ることができます。

 しかし、聴覚過敏の場合は不要な音のレベルを下げることができず、音が全て脳に入ってきます。そのため、話し相手の声に注意を向けて聞き取ることが困難だそうです。

 さらにスタジオでは、発達障害当事者の片岡さん(ASD)が聴覚過敏の苦しさを語っていきます。

 「音の連なり、相手の音声を聞き取ることがすごく難しくて。さらにその音の連なりを意味にすること、相手の話に反応すること。この3つを同時にやるのが大変でした。」

 「小さい頃は、他の子どもの中にいるのがすごく苦手でした。今思うと、音で体調不良になっていたのだと思います。」

私も聞き取ることが苦手だった

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  私はASD(自閉スペクトラム症)ではなくADHD(注意欠陥多動性障害/注意欠如多動症)です。「聞き取ることが苦手」「耳から入ってくる情報を処理できない」「入ってくる情報が多いと混乱する」という症状があります。小さい頃から、周りの人より会話が苦手でした。

 おそらく、脳の何らかの機能が未熟で、情報処理がスムーズにできないのだと思います。ADHD(注意欠如多動症)は、その名の通り「注意欠如」「多動」という症状が主ですが、コミュニケーションや感情の障害もあります。

 うまく人と関われない、疲れやすい、何となく毎日を過ごすのが苦しい。だけど何故なのかうまく言葉にできなくて、周りの人と何が違うのかもはっきりと分からないまま、言葉にならない苦しさを抱えていました。

 

今まで声にならなかった当事者の苦しさ

 ASD(自閉スペクトラム症)や発達障害について一般の人はどのようなイメージを持っているでしょうか。以前の名称であった“アスペルガー症候群”という言葉の方が馴染みがあるかもしれません。

「空気が読めない」「コミュニケーションが苦手」「宇宙人みたい」「周りと合わせられない」…等々、行動だけ見ればワガママだと思われるかもしれません。

 しかし、発達障害当事者は目に見えない苦しみを抱えています。感覚の異常は自分にしか分からず、その苦しさを伝えるのさえ難しいのです。様々な症状が壁となって、社会の中でうまく生きていくことができない人が多くいます。

 健常者と脳のはたらきは違ってもあっても、心は同じ人間です。嫌われると辛い、本当は一人でいるのは寂しい、周りの人と仲良くなりたい。「宇宙人」ではなく、普通の人と同じ心を持っています。ただうまく適応できないのです。

 発達障害の症状は、目に見えません。原因も解明されていません。だから時には、ただの甘えやワガママのように捉えられたり、努力次第で解決できると思われがちです。発達障害当事者とそうでない人とでは、同じ世界に生きていても見え方、聞え方、感じ方が違ったり「当事者にしか分からない感覚の異常」があります。

 それを言葉にして周りに伝えるのはとても大変なことです。今回のNHKスペシャルのように「感覚の異常」を映像化して、当事者の目線で伝えていく取り組みは素晴らしいと思いました。

 

 

当事者が自分自身を知るために

 今回のNHKスペシャルでは、最初の1時間のうち30分が「感覚過敏」についての話題でした。難しい症状を、じっくり取り上げてくれたことは良かったと思います。

 この「発達障害プロジェクト」は、定型発達者(健常者)が当事者(発達障害者)を理解するものだと思っていました。しかし、本当は「当事者自身が自分のことを理解できる」ためのプロジェクトなのかもしれません。

 発達障害はまだ解明されていないことも多く、まさに未知の世界です。きっと宇宙や深海よりも奥が深くて謎が多いと思います。日本での認知度も低いです。発達障害を抱えていても自分の障害に気付かずに苦しんだり、 苦しさをうまく伝えられなくてもどかしい思いをしている人たちが沢山いると思います。社会全体が発達障害者を理解する以前に、まずは障害の当事者自身が自分自身を理解することが大事なのではないでしょうか?

 発達障害の特性は十人十色です。自分自身の特性を知って、得意なこと、頑張ればできること、頑張ってもできないこと、どんな援助が必要なのか。それがはっきり伝えられるようになれば、この社会での居場所が見つけられるような気がします。

 

 

発達障害者のトリセツをみんなで作ろう

 NHKの発達障害プロジェクトでは、発達障害のトリセツ(取扱説明書)を作るという取り組みをしています。2018年春の完成を目指しているそうです。

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 発達障害のトリセツができたら、もっと言えば発達障害当事者ひとりひとりのトリセツをいつか作ることができたら、もっと生きやすくなると思います。

 私自身は、いまだに私のことが良く分かっていません。どこまでが障害の症状なのか、自分に何ができるのか、働く上でどういう配慮が必要なのか、いまだに手探りです。障害者雇用ではなく、一般雇用のアルバイトで何とか働いています。

 平成28年4月より障害者雇用促進法が改正され、障害者の法定雇用率が引き上げられました。発達障害を持つ人が社会で自分らしく働ける機会になると思います。このNHK発達障害プロジェクトは、当事者が自分自身を知って、社会に知ってもらうための架け橋になると期待しています。

 もっともっと発達障害者の声や姿を届けてほしい。当事者が生きる世界を知って欲しい。そんな思いでプロジェクトを見守りたいです。そしてこのブログを読んでいる当事者の皆さんも、プロジェクトに言葉を送ってほしいです。

番組への意見、取り上げて欲しいこと、日常生活で困っていることなどを、NHKの投稿フォーム|発達障害プロジェクトで募集しています。沢山の声が集まれば、より良い内容のプロジェクトになると思います。