ADHD(注意欠如/注意欠陥多動性障害)のラスカルです。最近、世間で最も注目を集めているニュースと言えば、俳優の高畑裕太容疑者の強姦致傷事件ではないでしょうか。
母親が有名な女優の高畑淳子さんであること、24時間テレビのパーソナリティーに内定していたこと、ブレイク中の俳優がホテル従業員を強姦する犯行に衝撃を受けた人も多いでしょう。
この事件に関するyahooニュースやネットニュースを読んでいると、高畑裕太容疑者が発達障害では?という書き込みや、発達障害と犯行を結び付けたようなコメントが目立ちます。
この事件に限ったことではありません。中途半端に世間に広まりつつある「発達障害」どれだけの人がその障害を正しく理解しているでしょうか。
目次
高畑裕太容疑者は「発達障害」なのか?
高畑容疑者は、TVなどのメディアで発達障害であると公表したことはありません。おそらく、診断されたことも、治療を受けたこともないでしょう。
確かに、未診断でも隠された発達障害を持つ人はいます。しかし、実際に診察した訳でもなく、会ったこともない芸能人を「発達障害」扱いすることへの違和感。
高畑裕太の特徴的なエピソードや言動がひとり歩きをしています。
- 共演者女性への距離感が近い
- 性的に奔放で自分を抑えられない
- 落ち着きなく動き回る
- 子どものころから問題児だった
- テレビ番組での失言や暴言
- 学校をさぼってコンビニに寄っていた
高畑淳子、思春期の裕太容疑者に危ぐ 学校での授業態度、勉強嫌い (デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース
このようなエピソードを切り取って「なんか発達障害っぽい」「ADHDっぽい」「空気読めてないしアスペみたい」という勝手なイメージで、高畑裕太容疑者を発達障害だと決めつけています。
発達障害の当事者にとっては「一緒にされたくない」という思いでしょう。
一人歩きする「発達障害」のイメージと偏見
発達障害、ADHD、アスペルガー症候群、自閉症スペクトラム…どれだけの人が本当に理解して使っているでしょうか。未診断の芸能人がADHDを公表してみたり、何かのネットの書き込みの煽り文句で「アスペ」と使われたり…。
精神科の専門医でも診断が難しいのがこの病気です。当事者でもまだまだ分からないことがたくさんあります。勝手なイメージと無知で、他人を発達障害だと決めつけるのは、偏見以外の何物でもないでしょう。
発達障害と犯罪が結び付けられる恐怖
発達障害=犯罪者
発達障害=犯罪を起こしやすい
このような偏見に満ちたイメージが広まりつつあります。確かに発達障害を抱えていて、その障害が原因のひとつとなり、犯罪を犯してしまう人もいるかもしれません。
しかし、発達障害を抱えていても善良で真面目で優しい人はたくさんいます。通院し、薬を飲んでコントロールをし、自分の障害と向き合っている人をたくさん知っています。定型発達者(健常者)でも、同じことです。
善良な人間もいれば、そうでない人もいる。
精神疾患にも同じことです。もし精神疾患・発達障害の人が犯罪を犯したら、人は犯罪の原因を精神疾患・発達障害のせいにしたがる。何かの異常犯罪が起きれば、健常者でも精神疾患・発達障害のせいではないかと勝手に推測する。
こうして障害者への偏見がどんどん進んでいる気がします。私は、普段は障害を隠して働いています。障害者雇用も検討していますが、このような事件が起きるたびに「ADHD(発達障害です)」と世間に公表するのが怖くなります。
発達障害って世間に広まれば広まるほど嫌われる気がする。高畑の件で思った。統合失調症と同じで誤解されやすい。
— 池田ラスカル@ADHD (@rasukarurun) 2016年8月25日
世間の人が持つ発達障害へのイメージ。それを想像すると恐怖を感じます。
障害と犯罪…思い出す「ブラックジャックによろしく
」
15歳の時に読んだ、忘れられない漫画があります。それはブラックジャックによろしくです。研修医が、色々な診療科を回り、医療の現実に直面する漫画です。
「このブラックジャックによろしく」の、単行本9巻・10巻・11巻・12巻は精神医療をテーマに描いていました。
「精神障害者を装えば無罪になると思ったんでしょうね・・・」
連日のマスコミ報道が、精神科の病棟に波紋を広げていく。
伊勢谷は報道に含まれた嘘に気づき、ある推論を門脇に伝えた。
「男が殺人を犯したのは病が原因ではない可能性があります・・・」
詐病疑惑。その可能性を追い、門脇は取材を開始する。しかし精神病弾圧の流れは、一人の記者に止められるものではなかった。
そんな中、事件報道を見て混乱した小百合は、自責の念にかられてしまう。
精神障害者に容赦のない冷徹な視線が浴びせられる!!
漫画の中では、かつて精神分裂症とよばれた統合失調症がテーマとなっています。統合失調症の青年(小沢さん)が、入院治療を経て、いよいよ退院し、病気をオープンにした上で退院後の就職先も決まります。
そんな中で、ある凶悪犯罪が起き、その犯人が精神科に通院歴があるとメディアで取り出されます。精神病・統合失調症=悪であるという風潮が世間広まります。
ワイドショーにはマスコミ受けのいい精神科医達が登場して、実際に診察もしていない男の心理を無責任に語ります。
世間には精神障がい者=危険 というイメージが広まっていきます。
退院が決まっていた小沢さんの母親は、近所の目が気になるからと、小沢さんが実家に帰ることを拒みます。就職予定だったお店の経営者も、事件を受けて小沢さんの採用を取り消します。
ショックを受けた小沢さんは、誤解を解くためにお店に説得をしますが、何もしていないのに警察に通報されてしまいます。
発達障害者は危険であるか?
この漫画は、最後に精神障がい者への偏見を問いかけるシーンで終わっていました。
今でも衝撃を受けた1コマです。
そもそも精神障害者が危険であるかどうかという問いかけ自体意味のないことなのかもしれない
糖尿病患者は危険であるか?
高血圧患者は危険であるか?
肉体労働者は危険であるか?
サラリーマンは危険であるか?
日本人は危険であるか?
ブラックジャックによろしくは、Kindle版が0円です。Kindle Paperwhite
やFire タブレット
などの電子書籍端末で、無料でダウンロードして全巻読むことが出来ます。
著作権者の佐藤秀峰氏の意向で、作品の二次利用が完全自由となりました。
また、 漫画onWeb でも無料で読むことが出来ます。
ぜひたくさんの人に読んでほしいです。
いつか発達障害への理解が広まる世の中になるように…